top of page
検索

地域おこし協力隊に就任し、竹の活用を通じて地方創生の解決の糸口を探す、竹渕さんへのインタビュー

  • 執筆者の写真: 吉田
    吉田
  • 2月8日
  • 読了時間: 10分


― 竹渕さん、今日はよろしくお願いします!竹渕さんは、今現在(2025年2月)、 長南町の地域おこし協力隊に就任し、木こりとして活動していらっしゃるんですね。


竹渕さん:  ハイ。今年で満期の3年目を迎えます。竹を使ったモノづくりに挑戦したくて、長南町の地域おこし募集に応募したのがきっかけでした。でも、実は町で募集していた仕事は、空き家対策だったんです。面接でもその話題が上がらなかったので、知らずに着任してしまって、最終的には担当者の方とすり合わせをして、希望とする活動を応援していただいています。


― 地域おこし協力隊って、町によって求める人材やカタチ(雇用形態)が違いますもんね。


竹渕さん:

 そうなんです。ぜひ、これから地域おこし協力隊を目指す方は、僕を含め、その地の協力隊に「実際に話を聞いて欲しい」と思います。自治体ごとに、受け入れ体制が異なっていて、良い点、課題点があるので。自分に合う場所を見つけてほしいと思います。


― さて、竹が入り口で長南町へいらしたわけですが、きこり(林業)のお仕事との結びつきは何ですか?


竹渕さん:

 協力隊着任当初は、木こりなんて全然選択肢にありませんでした。ただ、協力隊の卒業後(満期は3年間)に、竹の活用だけで仕事としてやっていくにはちょっと弱いな、とは感じていて…。次第に、竹で何かを作るには、竹を切る。良い竹を育てるためには、竹林の整地もする。そこで、じゃあ、里山のことや、きのこ栽培のこと、山全般の勉強をして仕事としていけたらいいな、と考えがまとまりました。だから、あくまで収入としては木を切る仕事が増えてきていますが、やっぱり竹を主軸に置く意識でいます。


 余談ですが、去年車がよく行き来する通り沿いの家に引っ越して、敷地に切り出した竹を置いているんです。そうしたら、車で通りすがりの方から「竹の打楽器を作りたくて、竹を探していました!」なんて飛び込みの相談を受けました。他にも、レーザー加工機を導入したので、それに関連する仕事も増えてきています。


― 元々ものづくりとかのお仕事をしていたんですか?


竹渕さん:

 一切してません。以前は、ドライバーとしてトラックでルートを配送していて、ユニック車の免許も持っています。他にも、土木関連の仕事も経験していて、外構工事や内装業を手掛けたり。一時期、デイサービスにも従事したことがありました。


― なるほど。では、今の竹を扱う仕事や林業に役立つ資格やスキルをすでにお持ちなんですね。


竹渕さん:  そうですね。ユニックに乗れるのは一番大きいかもしれませんね。ユニックって荷物を釣る車ですけど、釣るためには、対象物に対しての強度が保てるワイヤーや釣り具はどうするか、計算が必要になるんです。以前の仕事で、物理学とか機械工学的な知識を学んでおけたから、木を切るときの計算に役に立っていると思います。 ― なるほど。とはいえ、初めてのお仕事。どこかに弟子入りはしたんですか?


 はじめは、一般社団法人もりびとを訪ねて、弟子入りの形を取っていただきました。その後は、ひとり親方の仕事を手伝いに行って、見て学んでいます。おかげさまでだんだんと、仕事も任されるようになっています。


―スゴイ!ちなみに、竹と長南町に関心を持ったきっかけはなんだったんですか?


竹渕さん:  協力隊になる前年、竹あかりのワークショップを仲間と手伝ったんです。そこで「竹明かり」を改めて認識して、この竹あかりを、竹があるところでやったら面白いなと思いました。

 それに加えて、自転車での日本一周を通じて、地方創生にも関心が出て、両方を叶えるなら千葉の実家に近い長南町かなと思ったんです。


― 自転車で日本一周!?


 そう、働き過ぎでちょうど一区切りをつけたくて、貯金を溜めてから、1年間かけて、日本一周しました。生まれ育った千葉県以外だと、東京に住んだこともあったんですけど、「ほんとつまんねえとこだな」って思ったんですよ。「あ!でも千葉県と東京以外に行ったことがないんだから、それを言う資格はないだろう」と思って、「じゃあ一回見に行こう!」っていうきっかけでした。


― 大人になってから、立ち止まるのって勇気がいりますよね?


竹渕さん:  控えめに言って、今までやってきた手に職という部分で、自信がありました。年齢がネックになるかもしれないけど、一度休んでも、自分の能力でまた普通に稼げると思って。別に収入が少なければ、少ないなりの生活をすればいいっていうのもあったので、不安はなかったです。


― 日本一周から、何を感じましたか?


竹渕さん:  自転車の道は、海沿いが多いんですが、大阪とかの大きな港を除いて、過疎っているところだらけした。日本中が過疎地なんだと肌で感じ、地方創生という言葉を、強く意識するようになった。ほかにも、どこに住みたいか考えるようになったんですけど、屋久島で出会ったおじさんの印象もあって、水がきれいなところが良いなと思いました。その人は、水の結晶は一つとして同じものはない、と教えてくれたんですが。ちょっと怪しいなと思ったんですけど(笑)、ぼくも不思議に感じることがあって共感したんです。スピリチュアルとかは、あんまりわからないんですけど、山に入ったときに不思議な気配とかに出くわすことがあるので、それぞれ土地が持つ力みたいなのはあるんだろうなと。それには、その土地を流れている水も関係しているんだろうなと思いました。


― 屋久島には住もうと思わなかったんですか?


竹渕さん:

 屋久島は、愉しみに行くところだなと思いました。僕には、生計が立つアイディアが浮かばなかった。離島では、今まで自分が培ってきた、手に職が何の役にも立たないと思ったんですよね。


― なるほど。どこでも竹渕さんなら生きていけそうに思っちゃいますけど…

さて、長南町で新しい仕事。楽しい瞬間ややりがいはどんな時に感じますか?


竹渕さん:

 竹に関しては、イベントで、関係した人達が喜んでくれると嬉しくなります。あと、メインの収入は今、特殊伐採ですが、難しい案件が来た時に、自分でプランを組み立てて、クリアすることにやりがいを感じます。あとは仲間がいないと出来ない仕事なので、仲間との連携が面白いです。



― 特殊伐採というのは、普通の伐採とは違うんですか?


竹渕さん:

 高木や巨木を、クレーンなどの重機を使わず、よじ登ってロープなどを用いて伐採することです。

実は、林業の中でも特殊伐採をメインに活動している人は、まだ少数と思うんですよね。

 昔は、暮らしの中に山も組み込まれていて、ちゃんと山の整備がされていました。

樹を切り出して、薪でご飯を炊いたり、お風呂を沸かしていたりが当たり前でしたからね。

そうすると、山の樹はそれほど背丈も大きくならず、一定期間で循環していました。

 でも、現代社会では、エネルギーは買うものになっているから、山はいらなくなってしまった。

その結果、今の山は、樹が放置されて必要以上に大きくなってしまい、大雨などが降った後は倒木し、災害を起こす恐れがあるんです。


― うんうん。里山資源もったいないですよね。でも、放置されすぎて素人には手に負えません。


竹渕さん:

 そう、そこで僕たちの出番になるんですけど、歴史的にみると特殊伐採は新しい業。当然、僕よりも先に長く携わっている人は経験値が豊富ですが、まだまだ皆が勉強中っていう感じなんです。そのうえ、毎回現場も、状況も全て異なるので、その都度色々な課題を考えながらやらなきゃいけない。だから現場で集まったメンツで、「じゃあ、どういうふうにやっていこうか?」と、切磋琢磨に意見を出し合って、試行錯誤していくんですが、この過程も魅力の一つかなと思います。


― 言い換えれば、飽きずに、毎回刺激があるお仕事なんですね。

他にはどんな活動をされているんですか?


竹渕さん:

 竹あかりのワークショップもニーズが高いです。長南町内の開催にとどまらず、都内でも要望を頂いて出張しています。去年は、長南町オーガニック推進協議会のメンバーと一緒に、白金商店街(東京都・港区)のマルシェに出店したんですが、それがきっかけで縁が出来て、地元の子供たちや、阿波踊りチームの方たちに、お祭りで使う竹あかりや竹提灯を作る体験会を開きました。普段触れることが少ない、電動ドリルで思いっきり穴をあける工程が面白かった様子です。こういうイベントがきっかけで、長南町のことや里山についても知ってもらえると嬉しいですね。


― 今のお仕事を始める前と後で、何か変化はありましたか?


竹渕さん:

 まず、個人事業主になったことで、人との関わり方が変わりました。どこから仕事につながるのか分からないから、出会った人すべてと繋がるようになりました。会社勤めの以前は、仕事上の人間関係は社内だけで十分。その会社内での仕事が円滑に回ればいいわけなんで。オン・オフがなくなったとも言いますが、感度が合う人といい刺激がある仲間との輪が広がっていく魅力があります。


― 何か夢中になっているものがある人とか、意欲がある人同士で会話すると、面白いですよね。


竹渕さん:

 そうなんです!僕は自分で探して、学びたい知識を持っている人のところに、訪ねに行ったりもするんですけど、成田(千葉県)に竹の研究をひたすらずっとやっているがいて、竹のポテンシャルといろんな可能性を更に感じました。


― 日本各地、竹が厄介者になっているし、何か活用されたら良いですよね!


竹渕さん:

 ハイ。実は、そもそも竹ってまだまだ研究が全然されていないんです。竹の開花は、120年に1回だから、1世代では解明できないんですって。そういう点も、竹の面白さだと感じています。


― 地域との関わりについて聞かせてください。


竹渕さん:

 僕はこの町が、もっと活性化するために、地域おこし協力隊の人数が増えたら面白いだろうな、と思って役所や議員の方たちに提言しているんです。外からの人が、町の魅力を感じると、改めて地元の人たちが、長南町の良さに気づくことにも通じると思っているから。


 また、地元の方にも、協力隊という制度を知っていただくきっかけを作りたくて、町のボランティア活動にもいろいろ参加しています。例えば、町の一大イベント花火大会の運営や、小学生の朝の見守り活動など。移住者同士は簡単に繋がれるんですけど、地元の方とは自分が飛び込んでいかないと、なかなか接点が持てません。ボランティア活動を通じて、様々な世代や立場の人達との繋がりができました。


― 地元の方から受けたメッセージ、何かありますか?


竹渕さん:

 竹や山の整備をしたとき、ありがとう。と喜ばれました。あとは、筍の販路を相談されています。収量を安定させるためには、竹林の整備に3年はかかるので、採算をどうとるか?収益化までの計画が難しいですね。課題の一つです。


― 今の暮らしで、心が満たされるときはどんな時ですか?


竹渕さん:

 幸せかぁ・・・(笑)。実は年末、体調を崩してしまったので、休み休みやっていかなくちゃ、とは思っているんですが、今は仕事を軌道に乗せることが第一優先で、ついつい根を詰め込んでしまっています。 でも、仕事のステップアップに手ごたえを感じたときは、嬉しく感じるから、幸せだと思います。


― 今後のビジョンは?


竹渕さん:

 竹あかりを通じて、竹林整備と地元のお祭りを繋げて、労働じゃなくて、楽しむために竹林をきれいにしよう!という運動が、地元の方に意識付くといいなと思っています。いまでも町には、地域の人達の絆があります。そこで、僕一人が、荒れてしまった竹林を守るのではなく、地元が困っていることは皆の力で解決する。僕一人で、地方創生は到底できません。やっぱり、そこにいる人たちの意識が変わることが一番大きいんですよね。地元の力が確かにある。だから僕の一石が、皆さんのエネルギーに火を灯すきっかけになれば嬉しいです。


 さらに、僕は竹を切り口にしたマネタイズをしていきたいです。その仕組み化が確立したら、ほかの自治体にもシェアしていきたいと思います。日本一周から気づいた、困っている過疎地が少しでも賑わいを取り戻せたらと考えています。



(インタビュー/吉田美希)

知らなかった竹の世界、林業や地域おこし協力隊のお話など、ありがとうございました。


山の力は私たち稲作農家や野菜農家ともつながっていて、持続可能な里山の豊かさを維持するためにも欠かせません。一方で、多くの竹が河川沿いに植林され、私たちの暮らしを守ってくれています。

厄介者になってしまった竹に光を当てる、竹渕さん。お名前にも「竹」をお持ちの偶然は、何か必然だと思ってしまいます。これからのご活躍も応援しております!


竹あかりづくりや竹飯盒のワークショップなど、お問い合わせは以下のご連絡先まで。


氏名:竹渕 真博さん

職業:アーボリスト

屋号:竹渕屋

SNS:instagram @ginnoyamaneko

購入先:準備中

住所:長南町須田64-4

開業:R6年4月

仕事内容:竹加工品の制作と販売、剪定、伐採、草刈り、竹灯り展示、レーザー加工、ワークショップ等



 
 
 

Comments


©2023 長南町オーガニック推進協議会。Wix.com で作成されました。

bottom of page